2012年12月20日木曜日

日野椀はこんな風に創られています


一般的に漆器は繊細で取り扱いに気を使うイメージが定着しています。
事実多くの漆器は使って間もなくクラックが入ったり、漆が剥離して使い物にならなくなったりします。

日野椀はそんな漆器のイメージを払拭したくて試行錯誤しました。
毎日当たり前の様に使えてこそ良い道具であり、愛着がわくと思います。


日野椀が強い理由の一端をご紹介します。


日野椀は国産のケヤキ材を木地にしています。

従来、漆器の木地にはいろいろな樹種が使われています。
サクラ、トチ、ブナ、ヒノキ などです。
それぞれ特徴があり良い木なのですが、日野椀はケヤキにこだわります。
 
それは、漆の剥離に強いからです。

ケヤキは、導管(水分や養分が通る管、血管みたいなもんです)が太く、
削られた木肌には木目がはっきり深く、いっぱい穴が開いているのが見えます。


対して、サクラ、トチ、ヒノキなどは削られた面はツルツルで絹肌と言われるようになめらかです。



簡単に例えますと、
壁土やコンクリートをツルツルのプラスチックやベニヤ板の上に塗ってもすぐ剥がれますよね。
しかし、昔ながらのざっくり竹で編まれた下地に押し付けて塗っていくと、どんなに剥がそうと頑張っても剥がれないです。



こんな事が木地と漆という小さな世界でも起こっているわけです。


次は日野椀で使われている漆についてです。

漆は高温殺菌にも耐えられる新しい精製法で作られた『光琳漆』(京都 堤浅吉漆店製造)を使用しています。

通常の漆は水分を抜く精製の際、電熱器を使って生漆を温めたり、天日の下でゆっくりかき混ぜながら水分を蒸発させています。

しかし、漆を硬化する酵素ウルシオールは熱に弱く、蒸発の際にかけられる熱によりほぼ半分程が機能しない状態になっている事がわかりました。

光琳漆は特殊な方法で漆と水分を分離することに成功しました。
ウルシオールはほぼ100%生きたままで漆の精製が可能になりました。

この漆は素晴らしい強度で硬化し、日野椀の耐久性の一端を担ってくれています。
この光琳漆をふんだんに使用し、漆以外のものは極力、使用していません。

最初は木地に漆を塗るというより、導管に漆を詰め込んで行くという作業です。
強度を最高の状態に持っていくために、新しい技法と、機材を開発し、手作業で木目に漆を詰め込んでいきます。

そして、塗り→乾燥→研ぎ を6回~10回 繰り返し仕上げて行きます。

乾燥は、光琳漆の硬化を効率的に促進するための特別な室(ムロ 漆を硬化させるための特殊な部屋)を考案し使っています。

漆を乾かすとか乾燥させるなどと一般的に言いますが、この言葉は間違いです。
漆は一定の温度と湿度を与えられる事により化学変化をおこし、固まる性質を持っています。
完全硬化すると別の物質に変わり、酸にもアルカリにも溶けません。

完全硬化した漆器は漆の匂いはしません! 
そうでないモノもあちこちで沢山売られていますが・・・
漆器売場へ行くと独特の匂いがしますが・・・

少なくとも皆様にお使いいただく日野椀はしません。
制作を開始して8年あまり経ちますが(2004年より制作)日野椀を使ってアレルギー反応がでて、かぶれたという報告は1件もありません。

しかしながら、硬化した漆が唯一溶ける物質があります。
それはタンニンです。
タンニンはお茶やコーヒーに含まれています。
だから、漆器のコーヒーカップや湯のみが作られているのは、私はおかしいと思います。
事実、漆器にコーヒーいれて数時間置いておくと漆の匂いが戻ってきます。


日野椀は木地の仕立てから塗りの仕上がりまで、1つ創りあげるのに3ヶ月あまりかかります。
 
こうして丹念に心こめて作られた日野椀は一般家庭はもとより、幼稚園、保育園の給食用食器として、社員食堂やレストランの食器として食器洗浄機で毎日使われています。



 

0 件のコメント:

コメントを投稿